治療方法

薬物療法

子宮内膜症

子宮筋腫

 

薬物療法について

子宮内膜症の薬物療法には、症状を緩和する対処方法と病巣そのものに対する治療があります。 対処療法の一つは、痛みに対する鎮痛剤投与です。痛みがひどくなる前に自分の痛みにあったものを選べば相当有効です。一定限度内なら、服用しても大丈夫でしょう。 鎮痛剤が有効でない場合は、ピル(主に低用量)を使用することがあります。ピルは排卵を抑えるので避妊用にも用いますが、排卵を抑えると同時に子宮内膜を萎縮させる働きがあり、月経痛の緩和や月経血量の減少には役立ちます。ピルは避妊薬ということで今まで保険適用ではありませんでしたが、最近(2008年7月)ルナベルという薬が、子宮内膜症の適用となり保険診療ができるようになりました。しかし両者ともに、子宮内膜症の病巣自体を治すわけではないので、あくまで一時しのぎです。 子宮内膜症治療薬としては、ダナゾールとGnRHアゴニスト(アナログ)があります。これは子宮内膜症病巣そのものの縮小退縮を図るものです。少し具体的にみておきます。

薬物療法

薬物療法の変遷

治療薬剤の変遷
日本産婦人科学会が2004年に「子宮内膜症取り扱い規約」を出しました。その中で認定された薬は、対症療法としてのNSAIDS(非ステロイド性消炎鎮痛薬)、漢方薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬です。
鎮痛薬はプロスタグランジンを抑制する薬です。ロイコトリエン受容体拮抗薬はぜんそくやアレルギーを抑える薬で、プロスタグランジンと同じ炎症性物質であるロイコトリエンの作用を抑制する薬です。プロスタグランジンとロイコトリエンは共にアラキドン酸から合成されるので、プロスタグランジンだけでなくロイコトリエンもブロックしたほうがいいとの発想のもとで使われています。

プロスタグランジ
 
内分泌療法はホルモンを操作する薬です。妊娠中に子宮内膜症が良くなったという臨床的経験からホルモンを「妊娠中と同じレベルに上げてしまえばいい」、と考えてエストロゲンとプロゲステロンの混合剤を大量に投与した治療法(偽妊娠療法)が実施されていましたが、副作用も強く使われなくなりました。
以降は1983年に登場したダナゾールと1988年から発売されたGnRHアゴニスト(ゴナドトロピン放出ホルモンアゴニスト)が使われていました。GnRHアンタゴニスト、アロマターゼ阻害剤、ジエノゲストも治療薬として登場しました。
アロマターゼ阻害剤は乳がん治療に使われていますが、内膜症では保険適応をとっていません。エストロゲンが出来る時に必要な酵素を阻害するとエストロゲンが生産出来なくなります。エストロゲンの生産を阻害することで子宮内膜の増殖が抑制されます。このような作用を利用したアロマターゼ阻害剤の治療効果も検討されています。
 
昔から月経困難症や子宮内膜症には鎮痛剤と漢方薬が使われており、今後も中心的な治療薬だと思います。子宮内膜症の患者さんの8割位の人は鎮痛剤で痛みをコントロール出来ています。
 
経口避妊薬が発明されたのが1950年代でした。その後経口避妊薬が月経困難症、子宮内膜症に効果があるということで、1960年代から使われ始めました。同時にプロゲスチン(黄体ホルモン)単独の薬も使われようになりました。
ずっとこの状況で来ていましたが、1980年代に入りこれらの薬は、有効性は高いが副作用があって使いにくいということで、使用が徐々に減ってしまいました。
また、ダナゾールは血栓症による死亡例が4例出て、急激にシェアが減少しました。ダナゾールから血栓が出来る可能性はあるのですが、自然発生と比べてそれ程高い数字ではありません。当時ダナゾールを販売する会社が血栓症のことをきちんと厚生省に報告していなかったことが社会的な重大問題となりシェアが減ってしまいました。(提供 : 百枝幹雄)

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子宮内膜症

鎮痛剤

いちばん多く使われているのはロキソニン、ボルタレン、他にはインダシン、ポンタールなどです。月経困難症に対して適応をとっている鎮痛剤は薬事法で決められていて、適応外のロキソニンなどを処方してはいけないのですが、今のところは経験的に認められています。
鎮痛剤はアラキドン酸からプロスタグランジンが生合成されるところのいちばん鍵になるシクロオキシゲナーゼという酵素の阻害剤です。麻酔薬ではありません。麻酔薬は神経をブロックするので、プロスタグランジンが出てきて痛くなってから使っても一瞬にして痛みがなくなるのですが、鎮痛剤は酵素の産生を阻害する薬なので、麻酔薬とは異なります。鎮痛剤は飲んでもすぐには鎮痛効果が現れないので飲み方には工夫が必要です。いま使われている鎮痛剤は非常に作用時間が短いので痛くなってから飲まないと効き目がすぐに切れてしまいます。前もって飲んでおけばよさそうですが、「月経が始まりそうだ!」と思って飲んでも、なかなか月経が来なくて空振りに終わってしまうこともあるので使いにくいのですが、半減期が長くて長時間効く薬でフルカム、ボルタレンSRカプセルなどがあるので、痛みをコントロールしにくい場合には使うといいでしょう。それでも絶えきれない時には短時間作動性の鎮痛剤を飲み足すなどの工夫をすると良く効くと思います。実際この方法で救われている人もいます。痛みには心理的なファクターも多いので、鎮痛剤だけで効かない人は軽い精神安定剤も一緒に服用すると鎮痛効果が上がります。
(提供 : 百枝幹雄)

 

痛み止めですが、イブプロフェンというような一般の薬局で売っているものから、病院で出される消炎鎮痛剤まであります。プロスタグランジンという物質を作らなくする薬です。子宮内膜症病巣からはプロスタグランジンが沢山出ていて、痛みの原因になったり、子宮を変に収縮させて、それで2次的に痛みを呼び起こしたりするものです。薬名はボルダレンとかロキソニンです。歯が痛い時にも使う薬です。

「生理痛がひどいのです」といっておいでになって、「痛み止めはどのくらい使いますか」と聞くと、「痛み止めはなるべく飲まないようにしています」とおっしゃる方が大勢いらっしゃいます。私はびっくりするのですが「どうして飲まないのですか」と聞くと「あまり飲んでいるとだんだん効かなくなってきちゃうのが怖い、副作用が怖い」とおっしゃいます。痛み止めは飲んではいけないと思い込んでいらっしゃる方が多いのですが、痛み止めは上手に使えば、むしろ病気そのものを悪くするのを抑える可能性もあって、「もっとどんどん使いなさい」といっています。
勿論腎臓とか、胃に病気がある方は別ですが、痛いときにひと月で数日であれば、必要以上に飲むのを恐れなくてもいいと思います。1日3回、毎食後と出されても、必ずしも8時間毎という意味ではなく、1日3回ぐらいに収まればいいという意味ですので、空腹時にはあまり飲まない方がいいと言うのですが、”危ない”と思えば早めに飲む、すぐに飲む、効果が切れてきたかなと思ったら、それが2時間後でも、4時間後でもとにかくもう1回飲むように指導しています。火事の時に火を消すのと同じで、薬が切れてまた痛くなってきた時に、8時間待っていなさいというのは、火が1回消えたが、また燃えてきたのを黙って8時間ぼうぼうと燃えているのを見ているのと同じです。ちょっと燃えてきたら、またすぐに水をかけて消す、そうすれば必要な水は少なくてすみます。すぐに飲みなさいと指導していると、程度もありますが、あとで月経手帳を拝見すると結局一日に飲む痛み止めの量は変わらないかむしろ減ることが多いです。

痛み止めを摂取する経路も、飲み薬だけではなく座薬などもありますので、全然食べられない、吐いて飲めないという方なら座薬を使う、下痢をしていても飲める方は飲めばいいというように、その辺の工夫が色々出来ると思います。
薬のタイプも早く効くが、効果が弱いものと、長く効くものがありますので、うまく使い分けて、朝起きがけに長く効くタイプを使っておいて、早く効くタイプをこまめに使うとか、その様な指導をするだけでも問題が解決した人は沢山いらっしゃいます。胃が痛くなる方も勿論出てくるとは思いますが、副作用を緩和するいい胃薬などもありますので、医師に相談していただければアレンジしてくれると思います。上手に使えば効果が期待出来ます。
(提供 甲賀かをり)

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低用量ピル (正式名称 : 低用量経口避妊薬)

アメリカでは経口避妊薬による卵巣機能抑制が疼痛軽減に有効であるとされています。通常の避妊のように周期的投与が行われますが、持続的に投与する場合もあります。経口避妊薬を3ヶ月投与しても効果がなければそれ以上続ける意義はなく、重症の内膜症は薬物治療だけでは駄目だとされています。
欧州ヒト生殖医学会(ESHRE)のガイドラインでは、低用量経口避妊薬、ダナゾール、抗アンドロゲン剤のゲストリノン、乳がんや子宮体がんに使われるMPA、黄体ホルモンのプロゲスチン、GnRHアゴニストが治療薬として挙げられています。どれも同じ程度に有効で、それぞれの副作用やコストなどを考えながら使いましょうとなっています。
低用量ピルとプロゲスチンがクローズアップされています。プロゲスチンはコストが低く副作用が少ないので第一選択肢になるといわれています。病気に対する治療のエビデンス(科学的根拠)を集積しているコクランレビューのなかでは、MPA(酢酸メドロキシプロゲステロン)とDYG(ジドロゲステロン)などのプロゲスチンは有効だというデータが出ています。
日本では3、4年位前まではピルの使用量も少なく、プロゲスチンはあまり使われずに、メインに使われていたのがGnRHアゴニスト、ダナゾールでした。
欧米では長期に安全にということで、ピルとプロゲスチンが多く使われていていましたが、日本もこのような状況になりつつあります。今まで日本では自費で経口避妊薬の1相性ピルのオーソを流用して使っていましたが、この度、保険適用となったルナベルが発売され、治療薬として普及していくと予測されています。(提供 : 百枝幹雄)

 

偽妊娠療法といって、妊娠したら次の排卵はしないようにしようと中枢、脳の方で抑制がかかるのですが、その生理的な機能を真似した治療が避妊用ピルを使う方法です。
もともと女性の体というのは毎月毎月排卵するのですが、そもそもどうして排卵が起きるかというと、脳の視床下部というところからゴナドトロピンリリーシングホルモン(ゴナドトロピン放出ホルモン/GnRH)というゴナドトロピンを出すホルモンがまず出るのです。するとそれが卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンというホルモンを下垂体から出させて、それらが卵巣を刺激して、卵胞ホルモンと黄体ホルモンといういわゆる卵巣ホルモン、女性ホルモンが出るのです。避妊用ピルは、この本来卵巣から出ているホルモンを口から摂るのです。
すると「あー、なんだ、卵巣が十分働いているじゃない」と脳は勘違いをして、卵巣に刺激を出すのをやめます。すると排卵が起きないという仕組みなのです。排卵が起きないわけですが、本来卵巣から出ているホルモンは口から摂っているので、体全体の卵巣ホルモンの量としては保たれているわけです。

大きく分けて二つの服用の仕方があります。毎月3週間飲んで、1週間休むという方法をとると、休み中に生理が来ます。普通の生理のように来ます。一方ずっと通してピルを飲み続けていると生理が来ません。ただこれも途中で出血するようなこともあるので、細かいアレンジが必要です。
生理がこなければもちろんですが、3週間に1回休むという方法で生理を起したとしても、生理痛が普段の生理より楽だという人が多いです。子宮内膜症の病巣の大きさを測っても、ものすごく縮むというわけではないのですが、縮むか、本来だったらどんどん大きくなっているところが、大きくなるのが止まるというデータが東大病院でも出ています。

副作用は、妊娠しているような状態になるので、つわりの様な症状が出ます。吐き気が出るとか、あくびが起きるとかで、それこそ2ヵ月位で嫌ですといって止める人がいます。飲んでいても生理が来て出血を起してしまう方がいらっしゃいます。それから極まれにですが、血栓症を起すことが何万分の1であります。これが起こると命とりなので、血栓症のリスクとなるたばこを吸われる方には勧めていません。

偽妊娠療法

(提供 甲賀かをり)

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プロゲスチン(黄体ホルモン)

ピルはエストロゲンとプロゲスチンの合剤ですが、子宮内膜症に効くのはプロゲスチンです。プロゲステロンはステロイド環が4個つながったのが基本骨格です。これをほんの少し変えたのが、メドロオキシ系列のMPA(酢酸メドロキシプロゲステロン)、DYG(ジドロゲステロン)です。従来産婦人科の領域ではかなり使われているプロゲスチンです。
ピルの中に含まれているプロゲスチンは開発の順序に従って、第1世代、第2世代、第3世代といいます。少しずつ修飾しながら作られて来ました。第4世代として作られたのがジエノゲストです。ジエノゲストは単剤でも副作用が少ないのでピルにしないで単剤で治療薬として認可されました。

なぜ創薬は難しいのか

ステロイドホルモンには、性ホルモンのエストロゲン、プロゲステロンだけではなく、副腎皮質ホルモンなど重要な物が沢山あります。総てのステロイドホルモンの素はコレステロールです。コレステロールに色々な酵素が作用して、女性ホルモンのエストロゲン、男性ホルモンのテストステロン、黄体ホルモン、鉱質コルチコイドなど総てのステロイドホルモンが出来てきます。構造を少し変えるだけでこのように色々な種類のステロイドが出来てきます。ほとんど同じような構造類似体で出来ているので、ステロイド薬を作ることは非常に難しく、作られた物がどの様なホルモン作用を持つのかを正確にデザインするのが難しいのです。

それには以下のような理由があります。ホルモンが細胞にいくと、細胞にはホルモンを受け取る受容体があります。受容体にホルモンが結合して信号が伝わっていきます。ステロイドホルモンのアルドステロン、プロゲステロン、アンドロゲン、グルココルチコイドなどは、ほとんど同じような格好をした受容体を持っています。基本骨格が同じでホルモン自体も似ていて、受容体も似ています。ホルモンが受容体と結合して、核の中にホルモンと一緒に入っていってDNAに結合して、DNA上のホルモンによって刺激されて遺伝子が発現するという仕組みがあります。ホルモンも受容体も似ているだけでなくDNAに結合するDNA側の配列も共通の物を使っています。プロゲステロンもグルココルチコイドも男性ホルモンも鉱質コルチコイドも全部同じ配列に結合してしまいます。エストロゲンだけは違う構造を持っていますが、DNA側の配列も共通で、「これをうまく使い分けている生体はすごい」というくらい似たような物で構成されています。こういったところに挑戦して薬を開発するということは極めて困難な研究作業になります。
 
炭素数が21まで短くなったのがプロゲステロンで、これを素にして作られたプロゲスチンには、MPA(酢酸メドロキシプロゲステロン)、DYG(ジドロゲステロン)があります。ピルに含まれている新しいタイプのプロゲスチンはプロゲステロンから作ったのではなく、炭素数が更に短くなって、C19というテストステロンを素にして作られています。テストステロンは最も代表的な男性ホルモンですが、少し変えただけで黄体ホルモンになったところがみそです。女性ホルモン、男性ホルモン、黄体ホルモンとは人間が恣意的につけた名称であって、あまり呼び名にとらわれない方がいいという例です。
 
テストステロンの19番目まで縮んだのを更に縮めて19番のメチル基をとった19ノルテストステロンは男性ホルモン作用がなくなって、蛋白同化ホルモン作用が現れて筋肉増強剤になります。畜産の領域では正式に認められていて、大きな牛を作ったりするのに使われています。運動能力を増進させる為にスポーツマンが利用すると、ドーピングテストで陽性反応が出てしまう薬になります。
 
17位にエチニル基を付けただけで男性ホルモンが黄体ホルモンに変わって、エチニル基が付いたのでエチステロンに変わります。二つの変化、つまり付けて削ってと二カ所変化させたものが、19ノルエチステロンで、ノルエチステロンにメチル基を付けて第2世代になります。今年日本で発売されている3相性低用量ピルの大部分が第2世代のレボノルゲストレルです。避妊リングにレボノルゲストレルを染込ませた薬(ミレーナ)が月経困難症に効くと話題になっていますが、これも第2世代のレボノルゲストレルです。
第3世代のマーベロンに含まれているプロゲステロンは更にレボノルゲストレルの3位のところの酸素をとります。酸素をとることをデオキシ、デソキシといいますが、デソキシから来てデソゲステロンになりました。形も名称も複雑ですが、このような根拠の元に出来ています。
 
いちばん進化した第4世代のジエノゲストはほとんど第3世代と変わらない構造に腕の一部に二重結合を2つ持つジエンと呼ばれる構造で、エンが2つあるのでジエンをもじってジエノゲストと付けました。第1世代から第4世代までを比較すると、プロゲステロン活性、つまりプロゲステロンの受容体に結合してプロゲステロンを示す活性と、アンドロゲン活性、つまり男性ホルモンの受容体に結合して男性ホルモン作用を示す活性は、それぞれ異なっています。
 
第1世代のノルエチステロンは両方の活性を持っていて、プロゲステロン活性を1、アンドロゲン活性を1とすると、第2世代になると、プロゲステロン活性を5.3倍まで上げることが出来ますが、問題はアンドロゲン活性が8.3倍になってしまうことです。より男性ホルモン作用が強くなってしまいます。この部分を解決する目的で第3世代のデソゲストレルが開発されました。プロゲステロン活性は9倍になって、アンドロゲン活性を3.4倍に抑えることが出来るので、相対比としては、第1世代よりアンドロゲン活性を低く出来て、なおかつプロゲステロン活性が上がります。この創薬の過程でジエノゲストはプロゲステロン活性の特異性が強くてアンドロゲン活性がないというメリットを持って出来た薬です。
 
第1世代のオーソ、第2世代のトリキュラ、第3世代のマーベロンと進化して来てもプロゲステロン活性が上がっていけばいく程、配合量を減らすことで副作用を減らすことになります。プロゲステロン活性は一日投与で換算した数字では最終的にどのピルでも同じレベルになっています。一方、ジエノゲストにはアンドロゲン活性がないというメリットがあり、プロゲスチン単独で使用しても副作用がないので、エストロゲンを含まない単剤で使うことができるようになりました。2ミリグラムのディナゲスト(ジエノゲストの薬品名)単剤を使うと、プロゲステロン活性は10倍になります。普通使っているルナベル、オーソ、マーベロンの10倍のプロゲステロン活性を持っている薬になります。似たような感じでとらえられますが、低用量経口避妊薬とジエノゲストによるプロゲスチン治療は根本的に違っていて、低用量ピルは排卵を抑制することがメインで、それによって症状を抑えていく薬ですが、ジエノゲストはプロゲステロン単独の効果を期待して使う薬です。(提供 : 百枝幹雄)

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ダナゾール療法

男性ホルモンの形を変えた飲み薬です。中枢から抑制がかかって排卵が止まる作用があるのですが、実は全身のホルモン量が下がって効くだけでなく、とても不思議な薬で、局所に対しても細胞が増えていくのを抑える効果があります。
最初多めに飲んで段々量を減らしていくと何年も続けて使えますが、男性ホルモンに類似した薬なので副作用としては食欲がすごく出てしまう、にきびが出てしまう、声が低くなってしまう、まれですが血栓を起したり、肝機能を下げたりすることがあります。合う人に使うと結構合うというかすごくうまくいくことがあって、特に最初から痩せていて覇気がないようなタイプの方に使うと元気になるという印象があります。
普通、この人にはダナゾールは合うかなとか、いきなりはわかりませんが合う人はいます。積極的に最初からダナゾールをやることは最近あまりないのですが、ピルもだめ、GnRHアゴニストもだめ、という時に最後の切り札のような感じで使うことがあります。

ダナゾール療法

更に最後の最後の治療法としてダナゾール局所療法があります。本当に限られた施設で実施されているだけで、薬の特許の問題などがあって売り出されていないので、どこの病院でもとはいかないのですが、頭のどこかに入れておいていただけるといいと思います。直接腟の中に腟座薬として入れたり、子宮脱などのときに使うペッサリーに染み込ませて作ったり、避妊用のリングに染み込ませて子宮の中に入れる方法で、排卵が保たれたまま局所の病気を抑える方法です。

局所療法


(提供 甲賀かをり)

市販薬は「ボンゾール」で、日本でも二十数年使用されています。男性ホルモン(テストステロン)の誘導体で中枢側すなわち視床下部―下垂体系に働き、その結果として卵巣機能は抑えられ、排卵もなくなることが一つの作用です。またダナゾールには局所で子宮内膜症の病変に直接働き、病巣を萎縮させる働きがあります。ホルモンの副作用として、吐き気、体重の増加、軽度の肝機能障害が見られることがあります。特に重篤な副作用として、非常に稀ですが脳血栓にも注意する必要があります。
処方の例としては、ボンゾールを一日量400mgで4ヶ月服用します。副作用を考慮して、少量を長期に使用する試みもあります。
(提供 堤 治)

ダナゾールはプロゲスチンの1つで、テストステロンの誘導体です。中枢のゴナドトロピンの分泌を抑制し子宮内膜を萎縮させます。低エストロゲンの抑制作用は比較的少なく良い薬ですが、副作用として女性に大敵の体重増加や、肝機能障害、血栓症などの副作用がありシェアが激減してしまいました。副作用を軽減する方法のひとつとして低用量ダナゾール療法があります。これもアドバック療法を考案したバルビエリが提唱したのですが、必ずしも定用量の400mg/日を使わなくても100mg/日でも十分効果があります。量を徐々に減らしていって100mg/日位で投与すると、月経は来てしまいますが症状が緩和されます。最近ベルチェリーニという内膜症では大御所の先生が、50mg/日でもいいのではないかと提唱しています。良い薬が開発されて来ましたが、それぞれ副作用があるので副作用がなく長期に続けられる方法を模索中です。
(提供 百枝幹雄)

 

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GnRHアゴニスト

LH(黄体化ホルモン)、FSH(卵胞刺激ホルモン)という卵巣をコントロールするホルモンを調整するGnRHのアナログ(類似品)です。GnRHアゴニストが働くとLH、FSHの分泌が低下し、排卵刺激が来なくなった卵巣は働かなくなり、低エストロゲン状態になって月経が止まります。あたかも閉経を迎えたようなホルモン状態になるため、「偽閉経療法」という名前がついています。
エストロゲンが来なくなった子宮内膜症の病巣には縮小退縮が起こります。薬を止めれば、下垂体もLH、FSHの分泌を再会します。やがて卵巣も普段通りに働きエストロゲンを分泌し、排卵月経が戻ってきます。
ホルモンの作用でいったんは病巣が縮んでも、エストロゲンがふたたび働けばいずれまた膨らんできます。

日本で現在使用されているものとしては点鼻薬が二種類、ブレセリン(市販名スプレキュア)とナファレリン(ナサニール)があります。1日それぞれ3回ないし2回で、4〜6ヶ月間の連続使用します。月に1回注射するスプレキュアMP、リュープレロリン(リュープリン)、ゴセレリン(ゾレデックス)もあります。
ホルモン剤で月経を止める方法は、更年期障害様の諸症状に加え、骨量の現象といった長期的な影響も危惧されます。GnRHアゴニスト療法を繰り返し受けることは様々な副作用の問題もあり、慎重でなくてはならないと思います。効果も一時的なその場しのぎなので、繰り返し用いたくありません。
(提供 堤治)

GnRHはアミノ酸が10個の非常に単純なペプチドホルモンです。GnRHアゴニストの一部のアミノ酸を別の物に置き換えてみたら作用はどうなるだろうかと沢山の実験が試みられ、その結果開発された薬です。6番目のアミノ酸を修飾させると安定性が増し、GnRHの受容体が結合した後は半減期が長く、結合したままの状態で効果を発揮します。
アゴニストは作動薬でGnRHと同じ受容体に結合したままの状態で、本来のGnRHが結合出来ないので、最初にGnRHの作用が強く出てしまうのですが(flare up現象)持続的に使うことで、結局はアンタゴニスト(拮抗薬)として働きます。これを利用して、GnRHアゴニストがGnRHの阻害剤として使われています。これにより下垂体からのゴナドトロピンの分泌は次第に抑制されて、卵巣からのエストロゲンもプロゲステロンも出なくなり子宮内膜症病巣、子宮筋腫が萎縮します。反面、低エストロゲンによる更年期様症状と骨塩低下の副作用が出てしまいます。更年期様症状の中でも火照り程度でしたら一時的な事で我慢が出来ますが、鬱症状が強く出ることがあるのでGnRHアゴニストを使えない人がかなりいます。これらの症状はエストロゲンが30pg/mLを下回ると出てきます。
(提供 百枝幹雄)

スプレキュアとかリュープリンという薬を使います。保険適用で、注射薬も、点鼻薬もあります。どのように作用するのかというと、ゴナドトロピンリリーシングホルモンという下垂体に対して卵胞刺激ホルモンとか黄体化ホルモンを出すはたらきをブロックするのです。
するとブロックされて、これらホルモンが出ないので女性ホルモンも卵巣から出なくなり、排卵も月経も止まって、卵巣ホルモン(エストロゲンとプロゲステロン)の量も完全に落ちます。ですからいわゆる閉経状態となり、偽閉経療法といいます。ほてり、欝っぽくなる、骨量が減って骨粗鬆症になるなどの副作用があるので、例えば49歳50歳ぐらいで、放っておいても、あと1、2年で閉経するかなという人に使って早めに閉経に持ち込む治療(逃げ込み療法)として使うこともあります。若い人に使う場合は6ヵ月というのが1クールで、そこで1回中断します。その様な使い方をしている病院が多いです。

GnRHアゴニスト


(提供 甲賀かをり)

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アドバック療法

GnRHアゴニストを長期に使える方法としてバルビエリが開発したアドバック療法があります。エストロゲンを血中濃度30〜50pg/mLの範囲にコントロールしておくと副作用も軽減して病気に対する効果も期待出来る治療領域があります。GnRHアゴニスト療法で治療してエストロゲンを押さえておいて、エストロゲンかプロゲステロンを少量投与するという二度手間のような方法が必要になりますが、GnRHの性格上調節性がない為に下垂体から出てくるエストロゲンが完全に抑制されて、更年期様の副作用が強く出てしまいます。その副作用を弱める為に開発された治療方法です。日本でもかなり普及していましたが、GnRH療法の保険適用が6ヶ月と決められている為に、6ヶ月を超えてアドバック療法を続けようとすると、保険査定されてしまいます。最近は医療費の抑制で審査が厳しいので保険では出来ません。半年間は保険で治療出来ますが、それ以降は自費になります。欧米ではかなり推奨されている治療法です。
(提供 百枝幹雄)

GnRHアゴニストの副作用を緩和する為に考えられたのがアドバック療法という方法です。GnRHアゴニストを注射なり点鼻なりで続けながら、ピルと似ているのですが、ピルほどにはホルモン量が多くない薬を使います。エストロゲンとプロゲステロンを少しだけ飲んでもらうと、排卵はちゃんと止まっているが、女性ホルモンの量は少し維持される状態になります。すると骨粗鬆症が予防され、鬱っぽい症状などの更年期様症状もよくなります。コストの面では、もともとリュープリンが月に1万円くらいかかるところへさらにアドバック療法の薬を足すので、よりコストがかさみます。

アドバック療法


(提供 甲賀かをり)

ドローバック療法

ドローバック療法は、注射あるいは点鼻で投与する間隔を少しずつ空けていくと卵胞刺激ホルモンが少し働き出して、排卵するまでには至らないが、卵胞ホルモンが微妙に出ているという状況を作り出す方法です。そのために必要充分な投与の間隔を見つけます。さじ加減ですね。
採血をして女性ホルモンを計りながら、注射の場合は注射する間隔を4週間から5週間、6週間と空けていったり、点鼻の場合は一日に3回のところを2回に減らしたりする方法です。
するとアドバックと似ているのですが、更年期様症状などが緩和され、あまり骨量も下がらないで、投与期間をひっぱれることが実際は多いです。

日本では、GnRHアゴニストの保険診療は6回で1クールです。それで一旦投薬を切って6ヶ月休薬しなければいけないという決まりがあります。上記のような副作用が問題になるというのが理由です。しかし理論的には副作用をモニターして、安全を確認していれば、使ってかまわないはずですし、国際的にはアドバック療法などは認められている治療法で、6回の縛りもない国が多いので、日本でも認められるよう働きかけなければいけないと思っています。東大ではいまのところ保険が切られずに続けていて、東大病院の患者さんでは、もう5年位これでずっと続けている方もいらっしゃいますが、病院や県によっては、保険の通らないところがあるので、この様な方法はあまり公には書かれていないのです。(筆者注:東大病院でも現在は7回目以降の投与には保険がきかなくなり、自費治療としています。)

ドローバック


(提供 甲賀かをり)

GnRHアンタゴニスト療法

新しい薬で、GnRHアンタゴニスト薬(注射)があります。ドローバックと似て作用が少し弱くて、少し卵胞刺激ホルモンが出ている状態です。するとそれほど更年期様症状がでないところで維持出来ます。アゴニストを使った場合は、最初は少し出血が起きたりする副作用があるのですが、それがないことと、それからまだ本当に先の先で、今はまだ猿でやってうまくいったところですが、飲み薬でできる可能性もあります。すると毎月注射をしに病院に行かなくてもいいということになります。

アンタゴニスト


(提供 甲賀かをり)

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抗アレルギー剤

最近話題になっている抗アレルギー剤です。子宮内膜症の癒着で、腸とか卵巣と子宮などがくっつきっこしちゃうようなところが発生する機序にアレルギー、喘息、花粉症というような病気を起す機序と似ているようなものがあるのではないかと眼を付けた人がいました。そのようなアレルギーでは、ロイコトリエンという物質が出てくるのですが、それを働かないようにする薬が子宮内膜症に効くのではないかということで使われています。
子宮内膜症の治療薬としての保険適用はないので、その薬を処方する時は自費になります。痛み止めのプロスタグランジン合成阻害薬では効かない痛みにも効きます。1回出来てしまった癒着はそんなにアクティブな病気ではないので、ひっぱられたりする痛みも痛み止めで効かないようなことがあるのですが、効く事があります。癒着が治ってきたのかどうか、まだよく判っていないところが多いのですが、実際にこれを飲んだあとに腹腔鏡で見ると癒着が少なくなっているとか、腹腔鏡がやりやすくなっていると報告している人もいるのですが、まだ大規模な臨床試験はなく、これからというところだと思います。
ただ、いい点は、ホルモンをいじるわけではないので副作用もそれほどなく、もし合うような方がいらっしゃれば、あるいは他の薬を組み合わせたりしていいようになれば、これから少しずつ広がっていく可能性があるかなと考えています。

抗アレルギー剤


(提供 甲賀かをり)

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メリット・デメリット

偽妊娠療法、偽閉経療法のGnRHアナログ、ダナゾールと並べると、症状に対する効果はダナゾールと偽閉経療法は強くて、偽妊娠療法のピルはさほど強くないがあります。病巣に対する効果は、この2つは国際的にはエビデンスがありますが、ピルに関しては今データを蓄積中です。副作用の弱さと表裏一体で、治療効果もすこし弱いかも知れないが副作用が少なくていいと報告されています。
妊娠に関しては、ピルを使用中の患者さんから「妊娠したくなったら、どのくらい前から服用を止めればいいのですか」とよく聞かれるのですが、もともとちゃんと排卵している人は止めた次の月から排卵します。ですから3月から赤ちゃんが欲しいと思えば、2月に服用を止めればいいのです。
偽閉経療法では、例えばアドバック療法でずっとひっぱっていたりした方は、止めてから3、4ヵ月生理がこない方が多いので、そういうニーズがある場合は早めにおっしゃっていただいて早めに止めるように指導します。ダナゾールの場合は生理は来るようになるのですが、胎児毒性の関係で3ヵ月位空けなさいといわれています。
費用に関して。ダナゾールはとても安い薬ですが、GnRHアナログでアドバックをした場合は費用は高くなります。

各種ホルモン療法の良い点,悪い点

(筆者注:2008年より、この他にジェノゲスト(商品名ディナゲスト)が、子宮内膜症の治療薬として使われ始めました。これにともなって、東大ではこれまでよりもGnRHアナログアドバック療法やダナゾール療法を受ける患者さんの数は減ってきています。詳しくは別の稿を参照してください)。
(提供 甲賀かをり)

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子宮筋腫

GnRH アナログ療法

経過観察と薬物療法

子宮筋腫は女性の3人に1人はもっているといわれるくらい、多いものです。そもそも、自覚症状がないものは特別な治療をしなくても大丈夫なものが多いです。筋腫が大きい場合や、大きくなる速度が速い場合などは治療が必要になりますが、症状が軽度なら経過観察となります。
症状があれば痛み止めや増血剤で対応します。ホルモン療法(GnRHアゴニスト=偽閉経療法)もありますが、投与期間は通常2-6カ月間です。多少副作用が問題になります。更年期様症状などがでることもあり注意が必要です。なおGnRHアゴニスト投与終了後、卵巣機能は回復しますが、同時に縮小した筋腫も再び大きくなるためアゴニスト自体に根治性はありません。
(提供 堤治)

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