病院の選び方

賢い患者への手引き

1、「正確な診断名と症状を知る」
 もし筋腫と診断されたら筋腫の種類(子宮漿膜下筋腫、子宮筋層内筋腫、子宮粘膜下筋腫)、患部の場所、数、大きさなどを医師に聞いて正確に把握しましょう。筋腫の種類によって治療法も手術方法も違ってきます。
子宮内膜症、子宮腺筋症、卵巣嚢腫などと診断された方は病巣の状態、癒着の程度などを医師に聞きましょう。MRI、CT、経膣エコー等の苦痛を伴わない簡単な検査で分かります。

2、「からだの日記をつける」
 基礎体温、月経痛の有無、出血量、からだのどの部分が痛かったか、痛みの程度、服用している薬等を毎日記録しましょう。それらを記録する便利なツール「月経手帳」が東京大学病院、女性外科のホームページからダウンロードすることができます。内膜症の患者さん用に作られていますが、筋腫の患者さんにも対応出来ます。
 「身体の日記をつける」利点はいくつかあって、病状に対する自覚が出て来ること、そして病状の評価が客観的に判断出来ること、さらにこの記録を医師に見せる事で、患者の病状が正確に把握でき、正確な診断の手がかりになります。

3、「病気について知る」
 筋腫,内膜症、腺筋症について知る姿勢が大切です。インターネット、書籍などがありますが、医療文献を読んで新しい情報を積極的にとりいれましょう。経験者の話も「私だけじゃなかったんだ」と元気づけられるとともに治療方針をたてるときの参考になるでしょう。

4、「手術を理解する」
治療方針の選択肢に手術の可能性が出てきたら、手術方法について知っておくことが重要です。堤治先生のホームページ「堤治の世界」(http://www.dr-tsutsumi.jp/)には女性の病気、手術のわかりやすい解説があり、自分の病状ではどのような手術方法が適用になるのか、経過は、メリット・デメリットはなどの最先端の正しい情報が得られるでしょう。

5、「病院、医師探しをする方法」
 通院中の病院で内視鏡下手術(腹腔鏡下手術、子宮鏡下手術)をしてもらえればいいのですが、不可能な場合は、書籍、インターネット、メディア、口コミなどから情報を得ることもできます。
日本産科婦人科内視鏡学会の技術認定医は、手術件数100件以上、学会発表5回、論文発表5件、ビデオによる手術手技の審査を受け認定されています。技術認定医が日本産婦人科内視鏡学会のホームペー(http:/square.umin.ac.jp/jsgoe/)で公表されています。
 都道府県によってはまだ認定医がいなかったり人数が少なかったりですが、全国には200名以上の認定医がいますから、条件にあった医師を探してください。
ただ、腹腔鏡で認定医なのか、子宮鏡で認定医かが明記されていませんので、医師や所属医療機関のインターネット検索をお薦めします。医師の経歴がわかり、論文が読める事もあります。認定を受けたのは腹腔鏡下手術か、子宮鏡下手術か、得意分野は内膜症か筋腫かがわかる場合もあります。
 これは実際にあった話ですが、内視鏡手術の第一人者ということを聞きつけて、内膜症の方が予約をしてはるばる外来を訪ねました。その先生は子宮鏡を専門とする医師だったのです。「内膜症の患者さんが私のところへ来られても困るから、他の先生を紹介します」という結果になってしまい、訪ねた本人は幾日も待ってようやく受診にこぎ着けたのに無駄足を運んだと落胆。医師にも予約待ちをしている他の患者さん達にも迷惑を掛けてしまうことになります。そんな幾つもの無駄をしないように、徹底した情報収集が治療への近道となります。
 少しでも不明な点、不安があったら病院に電話をして聞きましょう。電話口での対応の仕方で病院の雰囲気がつかめますし、受診予約も出来てしまいます。
 名医と噂されている医師や、メディア等で有名になった病院で手術を受けようとすると、かなり待たされます。予約から手術までの待ち時間は短くても半年以上、混んでいる場合は1年以上とも聞いていますから受診を希望される人は覚悟してください。
また、リストに名前が載っていないからといって技術がないとは限りません。そのことをふまえた上で参考にしましょう。
 大きな筋腫、嚢腫を核出して卵巣そのものを温存する場合、子宮全摘、内膜症で強度の癒着がある場合などは難度の高い手術になります。そのため術者の技術、熟練度がかなり問われます。それなりの技量が備わっている医師を選ぶことが肝心になります。

6、「受診」
 受診の際の具体的な心得ですが、持ち物は紹介状、今までの検査結果、CT、MRIなどのコピー、(2)でお話した「身体の日記帳」のコピー、メモ帳、筆記具などでしょうか。
 『紹介状』は今まで診てもらっていた医師にもらいましょう。「恥ずかしくて言えない、先生に申し訳ない」と言って「採血も、内診も、MRIも、もう一回やります」という方が非常に多いそうですが、時間と経費の無駄になります。
どうしても言い出しにくいときは「私は先生を信頼しているのですが、他の病院でも診てもらいなさいと家族が私の顔を見る度にうるさく言うものですから」「母が心配して実家の近くの病院を薦めるものですから」と身内を持ち出す手もあります。
 「そんな(有名な、偉い、忙しい)先生になんて普通の人は診てもらえない」とか、「コネや紹介状がないと駄目」などとよく耳にしますが、紹介状がなくても初診料が2〜3千円程高くなるだけで希望する病院の受診は可能です。噂にふりまわされずに病院へ電話して確かめましょう。
 『メモ帳』には受診の際に医師に聞きたいことを書いておいて要領よく質問しましょう。言われたことは忘れずにメモしておきましょう。医学用語は難解で言い回しも独特だったりして、その場で納得したつもりでも実は理解していなかったということも多いものです。メモさえとっておけば、わからなくても帰ってから調べることが出来ます。聞きそびれたことや、もっと詳しい説明が欲しいときは看護士さんに質問するという手段もあります。限られた診療時間です。有効に使いましょう。

7、「手術」
 腹腔鏡下手術は利点も多いのですが、その一方限界も、症状によっては手術が不可能な場合もあります。腹腔鏡下手術で開始しても開腹手術となるケースも稀にあります。それを良く承知して理解の上で手術に望んでください。医師とのインフォームド・コンセントが大切になります。
 手術までの期間は、手術をしやすくする(筋腫の体積を小さくする、手術時の出血を少なくする、病巣を萎縮縮小する)などの目的で術前GnRHアゴニスト療法が提示されるでしょう。注射薬[リュープリン、スプレキュア、ゾラデックス(4週間に1回)]や、点鼻薬[ナサニール、スプレキュア(日2回から3回)]などを薦められることが多いかと思います。
 治療が始まると個人差はありますが低エストロゲン状態による更年期障害のような症状や、骨量減少の影響が出てくることがあり、若い人ほどその傾向が強いようです。症状や目的によって使われる薬の種類も違ってくるとは思いますが、一旦体内に取り込まれた薬を取り出すことは出来ません。点鼻薬はつらい副作用が出た時には摂取を止めることも、また量の調節も可能です。術前投与は三ヶ月程で効果があるといわれています。それ以上の期間の投与には注意が必要と言う医師もいますので、よく相談し納得した上で使いましょう。
 ホルモン療法についての詳しい説明が欲しい人は、「ホルモン薬添付文書集」が「医薬品医療機器情報提供ホームページ、http://www.info.pmda.go.jp/」から入手してください。
 腹腔鏡下手術に伴う輸血の必要性は100例に1例あるかないかといわれていますが、手術までの待機期間に自己血の保存をしておきましょう。輸血にはリスクが伴います。輸血をするまでには至らなくても、手術時間が長引いて出血量が多かった場合は保存しておいた自己血をからだに戻してもらえます。手術中の出来事は予測不可能です。周到な準備が危険から遠ざけます。
 手術に不可欠な麻酔ですが、局所麻酔と全身麻酔があり腹腔鏡下手術は全身麻酔になります。双方には大きな違いがあることをご存知でしょうか、知識を深めたい人は、日本麻酔科学会のホームページ(http:www.anesth.or.jp/)が役立ちます。発明の歴史から解説されています。
 さて、術前検査も済ませて、ついに手術の時が訪れました。入院して翌日に手術、というのに病院から夜逃げをした患者さんもいると聞きました。手術をすることに悩んで決心が鈍ったらそれもありですが、名誉とは言えない伝説を残すことになります。手術日を決めたとしても、気持ちが変われば変更出来ますが、ただあまり間際になって辞められると、他の患者さんに迷惑をかけることにもなってしまいます。

8、「術後」
「手術は身体を痛めつけ、危害を及ぼします。このような刺激を侵襲刺激といいます。刺激を受ければ、身体はこれに反応して、生理学的にも生化学的にもさまざまな変化を示します。大袈裟かもしれませんが、手術直後の身体は恐怖あるいは憤怒の状態にあるといえましょう。」と「手術とからだー辻秀雄著」には書かれています。この本は手術と身体の反応、麻酔について詳しく載っていますので参考にされるとよいでしょう。
 腹腔鏡下手術は開腹手術と比べると快復が早く、退院後1週間ないし2週間後には社会復帰も可能といわれています。手術の内容によって異なってはきますが、早い人でと考えた方がいいのではないでしょうか。お腹の傷が小さく痛みが少ない手術でも、腹腔内では焼灼、切除、切開、縫合などの開腹手術とほぼ同様の処置が施されていると思っていいのではないでしょうか。
 どうも本人も周りの人にも「お腹を切らないから簡単な手術」と誤解する傾向があるようです。個人差もあり、それぞれの事情はありましょうが、無理をしないで、できるかぎり自分の体をねぎらいましょう。
 インターネットの普及により、婦人科関連の情報に限らず、様々な情報が手軽に入手出来るようになりました。便利な反面、どうしても自分に都合のいい情報を集めてしまう傾向があるようです。その受け止め方には注意が必要だと痛感しています。情報の量や、多様性に惑わされることなく、必要な情報をきちんと把握して、正確な知識を得て、慎重に治療方針を決めていきましょう。
 自分の身体を守るのは自分自身です。治療法も主治医とよく話し合い、最終的には自分で決めましょう。そのためには病気について勉強し、情報を集めましょう。幸いなことに子宮筋腫や子宮内膜症にはその時間的余裕があります。
                             (稲村つなみ)