女性のトラブル

子宮内膜症

症状 子宮内膜症とは 診断方法
病理 社会的背景と疫学 治療方法
取り扱い規約

症状

子宮内の子宮内膜は月経血とともに膣から出ていくのに、子宮内膜症病変部は 排除されないため、骨盤内の痛みの原因になり、臓器どうしの癒着の引き金にもなります。
月経の時だけでなく、エストロゲンが高くなる排卵期にも、子宮内膜と同じ性質をもつ子宮内膜症の病巣も活動的になって、プロスタグランジン等の痛みの物質を放出して下腹部や腰痛の原因となります。これらの痛みは「お腹の底が絞られ、引きちぎられる様な痛み」等と表現され、大変辛く耐え難いものです。
その後妊娠された方に聞くと、子宮内膜症の痛みは陣痛や帝王切開後の痛みの何十倍にも相当すると教えてくれることがよくあります。

子宮内膜症ではどのような症状がどのくらい起こるかを調査した資料があります。厚生省の研究班と患者さんを中心とした全国市民団体である日本子宮内膜症協会のものを見ますと、両者ともに月経時の痛みが九割近くを占めていることが特徴的です。痛みの程度を聞いた前者の結果では、鎮痛剤を服用しても日常生活に支障を来すとした人が18%もあり、社会問題として受けとめる必要を感じます。
月経時以外の痛みを訴えられる人も50―70%と高度です。骨盤の中に病変があるので、性交痛、排便痛も30−50%位の人にあります。

もう一つ重要な症状が不妊です。子宮内膜症に罹っている人の30―50%が不妊を一つの症状にしています。逆に不妊を主な症状とする人や不妊症の診療中に子宮内膜症が発見された人も、
30―50%と相当の割合で認められます。子宮内膜症状と不妊の関係は大変難しい問題です。子宮内膜症は癒着などを起こし、不妊の原因になり得るのは確かですが、不妊の結果、子宮内膜症になるという考えも成り立ちます。これは妊娠の機会のなかった人、あるいは別の原因で不妊の人は、妊娠による月経の中断がなく、その結果、月経を多く経験するうちに子宮内膜症ができてしまう。つまり不妊が子宮内膜症の原因とも考えられます。
(提供 堤 治)

 

子宮内膜症の代表的な症状は激しい痛みです。生理痛がひどいというだけでなく、お通じをするときや、セックスのときに痛いというのも、しばしば問題になります。もう一つの問題は、不妊症の原因になることです。
どうして痛みを起すのでしょうか?それは、子宮内膜症の病巣がダグラス窩、それから腹膜、にあると、その病巣から痛みをおこすような物質(プロスタグランジンなど)が沢山出て、軽い炎症、つまり腹膜炎を起すような状態に、特に生理中はなるからなのです。
また子宮内膜症による癒着も痛みの原因になります。生理中でない時も、癒着があることで、たとえば、腟と腸がくっつきっこしていると、腸はお通じの通り道ですから、ここにお通じが通ったりおならが通ったりするとひっぱられて痛い。セックスをすると腟の奥が痛いということがあるのです。
次に不妊症になる原因です。健康な女性では、卵巣から排卵、つまり卵子が放出されて、卵管という卵子の通る管にキャッチされます。一方、腟の方からは精子が泳いで来て、卵管で卵子と出会い、受精した卵子(受精卵)は子宮の方に戻って行って子宮内膜に着床し妊娠が成立します。ところが、子宮内膜症にかかって、卵管のまわりに癒着がおきると、機械的に卵管の動きが制限されてしまって、うまく卵子がキャッチできないことがあります。それから子宮内膜症があると、そこから卵子や精子に悪い影響を与える化学的な因子が出ます。するともし卵管が通っていても、途中で卵子が死んでしまったり、精子が死んでしまったりたりして、妊娠しにくくなってしまう原因になるといわれています。
(提供・甲賀かをり)


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子宮内膜症とは

子宮内膜症という病名を耳にする機会が増えてきていると思いますが、意外に正しく理解されていないことが多いようです。子宮内膜症がどのような病気であるのか、その原因や症状について説明します。

「子宮内膜症は子宮内膜組織が異所性(多くは子宮以外の骨盤内)に存在し、エストロゲンにより増殖、進行する疾患である」といわれます。まず、子宮内膜が何かということを知らなければなりません。子宮内膜は子宮の内面にある膜状の組織です。受精卵が発育する場所ですが、月経の時は剥がれ落ちて出血とともに体外に排出されます。この子宮内膜と同じ性質のものがお腹の中で発育して月経の時などに様々な症状を起こすのが、子宮内膜症とういわけです。子宮という名前がつきますが、実際の病変は子宮の外にあるということが特徴といえます。

子宮内膜症とは

子宮内膜症がどうして発生するのかは、十分解明できているわけではありません。要因として昔から挙げられているものに、月経時に子宮内膜が月経血と一緒に卵管を通って逆流するという「子宮内膜移植説(逆流説)」があります。
逆流した月経血の刺激で腹膜が子宮内膜に化ける「化生説」も有力です。逆流説にしても、化生説にしても、子宮(子宮内膜)の存在とエストロゲンの 活発な分泌が、骨盤内に子宮内膜症ができる為には必要です。 月経が始まる前の女のお子さんや閉経を過ぎてから出来ることは稀です。 特殊なものとして脳や肺に出来る子宮内膜症がありますが、これは胎児が発生する初期に子宮内膜の「芽」がさまようという「迷入説」などで説明されます。

子宮内膜症の発症リスクは初経(初潮)からの月経の周期や期間等に関係します。初経が早い程、月経の周期が規則正しく短い程、出血の続く日にちが長い程、子宮内膜症は出来やすいのです。逆に月経不順だったり、遅れがちの人には少ないことが知られています。
最近の初経の低年齢化、結婚・出産の高年齢化、少産化など女性のライフスタイルの変化も、月経の経過を長くして子宮内膜症の増加を助長している可能性があるわけです。
最近ではダイオキシンなどの環境ホルモンの影響も取り沙汰されています。
子宮内膜症の病変は子宮の中の子宮内膜と同様にエストロゲンの作用により増殖します。月経の度ごとに局所で出血も起こりうるわけです。(提供 堤 治)

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病理

子宮内膜症の腹腔内はどうなっているのでしょうか。骨盤内の臓器の位置関係をみると、子宮の前には膀胱があり後ろには直腸があります。
子宮と直腸の間にはダグラス窩と呼ばれる窪みがあり、ここは子宮内膜症の好発部位です。女性の場合は立っても横になってもダグラス窩が一番低い個所になるので、内膜症発生の原因となる月経血が常に溜まっている箇所になります。そのため内膜症がいちばん発生しやすい部位になります。またダグラス窩にある卵巣、卵管は子宮内膜症の多発部位です。腹腔内には腹水がありますが、逆流した月経血も腹水と同じように腹腔内に溜まります。そこで移植が起こったり、月経血中の何らかの物質に刺激されて化生が起こったりします。子宮内膜症の原因は月経血の逆流です。

子宮内膜症

骨盤内の解剖図で説明します。半分は正常な膀胱、子宮、卵巣、卵管、直腸の絵で、もう半分は子宮内膜症を発症した臓器の絵になっています。腹腔鏡でお臍の下からスコープを入れてお腹腔内を見ると、正常な場合はダグラス窩のところに卵巣と卵管がきていますが、ダグラス窩に内膜症病変があると子宮に直腸が癒着して、直腸がつり上がって来ます。卵巣で増殖した子宮内膜が出血を起こし、卵巣の中に古い血液がどんどん溜まって卵巣が腫れると、周囲に癒着が起こって臓器同士がセメダインで接着したような状況になっていきます。

卵巣の中で嚢腫から出血しては吸収されるということを繰り返しているとチョコレート状のドロッと濃縮された古い血液が溜まります。卵巣チョコレート嚢胞といいますが、写真を見ると、卵管、卵巣の回りに癒着があり、卵管が子宮の裏側に癒着で完全に埋もれています。直腸がダグラス窩の癒着で吊り上がって、チョコレート嚢胞があり、チョコレート状の液体が透けて見えます。

子宮内膜症

マクロなレベルで月経時の子宮の動きを見る方法としてシネMRIがあります。今までのMRIでは1つの画像を撮るのに時間がかかったのですが、器械の発達により子宮の1つの断面の情報がスピーディーに撮れるようになりました。
シネMRIで子宮の1カ所の断面に焦点を当て撮影し、リアルタイムに映し出された画像情報を何枚も集めます。この画像をパラパラ漫画のように連続すると、子宮の動いている様子を動画で見ることが出来ます。映し出された子宮の断面を見ていると、子宮筋腫や子宮腺筋症を疑うような影が見えてきたかと思うと時間の経過とともに見えていた影が消えてしまったりします。このような子宮の収縮の様子をリアルタイムでとらえられるようになったシネMRIは画期的な検査方法といえます。
 
子宮をシネMRIで見ると、おもしろいことが判りました。本来の子宮の機能は赤ちゃんを育ててお産をすることですから、陣痛が起こると子宮が収縮して赤ちゃんを外に押し出す動きをします。子宮は腸と同じ平滑筋と呼ばれる筋肉から出来ていて蠕動運動をします。腸の蠕動は上から下に押し出す動きだけですが、なんと、子宮では排卵期、黄体期、月経期で蠕動の方向が変わっていました。排卵時には頸部から子宮底部に向かって下から上に蠕動する動きが見られ、月経期になると逆に上から下に蠕動する動きが見られました。時期によって子宮はコーディネートされた蠕動運動をしていることが判りました。

シネMRIで見ると、月経困難症の強い人は月経中には子宮の中が真っ黒になって、全体が強く収縮していることがわかります。ピルで治療して痛みがなくなっている時は子宮の中が白っぽくなって、収縮していない子宮になっています。ぎゅうっという痙攣のような痛みから起こる収縮の病態がシネMRIの画像を通して把握出来ます。(提供 百枝 幹雄)

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診断方法

子宮内膜症の診断は症状を聞く問診に始まります。問診だけで判断するのは難しいこともありますが、通常、典型的な自覚症状を問診で聞き取り、 疑いを持ちます。さらに内診および直腸診で局所に痛みや硬結、卵巣チョコレート嚢腫(古くなった血液のようなドロッとした内容からチョコレート嚢腫と呼ばれる)等の特徴的所見が得られれば、診断がつく場合が多いのです。

さらに超音波断層法、CT、MRIによる画像診断や血液中の腫瘍マーカーという一種のホルモン(CA−125など)の測定がよく実施され、診断に役立てられます。

ただし子宮内膜症の最終診断は、腹腔鏡あるいは開腹による視診、さらには組織診で行うべきもので、その前の段階は「臨床的子宮内膜症」と呼ばれるものです。子宮内膜症には色々な分類方法があります。歴史的に見て古いのでは ビーチャム分類法がありますが、アメリカ不妊学会(American Fertility Society)が作ったrAFS分類法 (病変部位の広がり等を臓器別に採点して、
T期、U期、 V期、W期の4つに分けます) がスタンダードに使われていました。
最近アメリカ生殖医学会(American Societyfor Reproductive Medicine)に改名されました。病変の色調の記載まで盛り込んだ
r-ASRM分類法(癒着の程度、卵巣の腫れ、病巣の色など各部位の症状スコアを合計したポイントを付ける)に変わってきました。(提供 堤 治)

 

私たちが特に力を入れているのが、痛みに関する評価で、問診表を作っております。これは初診で、痛みがひどいのです、といらした場合には必ずお配りして患者さんにつけてもらっています。

ポケット問診票(ポケモン)

薬物療法、手術療法などを始めてからも2ヵ月後、4ヵ月後、何ヵ月後と、何度も答えていただいて、治療効果を見るようにしています。患者さんにはこういうものを書いてもらわなくても、右の奥のどこどこがズキンと痛いのですとか、ヒリヒリするのですとか、その方の言葉でおっしゃる事は、もちろん記載しておくのですが、なるべく客観的に評価したいのと、皆さん調子がよくなってしまうと痛い時にどういうふうに痛かったのか忘れてしまうので、その時の記録をなるべく正確に残しておきたいのと、意味合いがいくつかあります。
例えば「痛みの性質についてお尋ねしています」というところでは、普段診療でよく聞く事柄は、「刺すように痛い」「突き上げるように痛い」「重りが入ったようだ」と全部書き上げてあって、あてはまる症状に丸を付けてもらっています。更に別の用紙には人の形が書いてあって、「どの辺が痛い」のか痛い箇所に丸をつけることで表現してもらったりしています。

ポケモン(ポケット問診票)

私達は、これはポケット問診表、ポケモンと呼んで、私たちの訓練という意味合いでも使っています。つまり、普段から私たちは、こういう痛みを訴える方のお腹の中の具合はどうなっているのか、患者さんの症状と画像所見、症状と手術所見を、気にしながら比べてみて、それを何人何十人と診ていくことによって、こういうふうに痛い人のお腹の中はこうなっているな、と段々と判ってくるので使っています。

(ポケモン2)ポケット問診票2

麻酔科の分野などでは有名ですが、VRS(verbal rating scale/バーバル レイティング スケール=口頭式評価スケール)
や、VAS(visual analog scale/ビジュアル アナログ スケール=視覚的アナログスケール)という、痛みの程度についての評価法があります。
前者は全く痛くないのか、それとも痛くて1日中横になっているのかを、1、2、3、4で答えていただきます。
後者は、10センチの線が引いてあって、左端は全く痛みのない状態、右端はあなたが想像できるもっとも痛い痛み、そうするとあなたの普段の生理痛はどのへんですかというものです。物指しもなにもなく、患者さんは、ちょんと、チェックを付けるのです。それをあとで医者が定規で測って、この人は7.5だと記録しておいて、治療前は7.5だったが、治療後は5.5に下がったという事を統計的に解析することもできるので、客観的な評価として使っています。(筆者注:最近では東大病院の女性診療科のホームページからもダウンロードできるようになっています)。

症状の評価

月経手帳

月経手帳は2枚複写になっていて、患者さんが1枚目に書くと2枚目にも写るようになっています。そして、1枚は患者さんの手元に残り、もう1枚は医者のカルテに残ります。1ヵ月が一枚です。
毎日付けていただいて、生理がいつあったのか、どの程度出血があったのか、痛みはあったのか、あったとしたら、腰の方が痛かったのか、お腹の右側が痛かったのか、左側が痛かったのかを1から4まで、主観で書いてもらいます。それ以外にもトイレが近いとか、排便の時に痛かったかなどという症状があったら、書いてもらいます。
痛み止めを使った量を書いてもらう事も重要です。ボルタレンとかロキソニンとか薬の名前、座薬と飲み薬と両方使っている方は、それも全部、使った回数を正の字あるいは数字で書いてもらいます。すると痛み止めを4錠飲んでいるのに、痛みも強くて4だとか、痛み止めもたいして飲んでないのにあまり痛くなかったから1だとか、と痛みの評価ができる利点があります。
これには意味が2つあって、私たち医師が患者さんの病状の把握をするのに役立つこと、そしてもう1つは患者さん自身も、生理の時はどのくらい痛い思いをしているのか、あるいは痛み止めをどれくらい飲んでいるのかを記録をしていくことで、自分の痛みに対する自覚ができます。

それから痛みの程度だけではなく「生理じゃない時で、たしか生理のはじまる10日前くらいに痛い時があった」とか「日にちは忘れたけれど痛い時があった」とか、「なにか調子の悪い時があった」そう外来でおっしゃる方がいらっしゃるのですが、これが実は、よく話を聞いてみると、生理以外の時の痛みが排卵に伴うものであるとか、なにかいらいらするような症状が月経前緊張症であるとか、そういうことを推定する手がかりが、カレンダーを見ることで判る場合があるのです。
私がまだ医者になってから3年目位の時に、患者さんで、几帳面に自分の日記帳に痛み止めを何錠飲んだとか、痛くてどうだったかなどと書いた手帳をいつも持ってくる方がいらして、私はそれを写すのが面倒くさいので「コピーさせて」と言って、カルテに貼ったのですが、そんな事をするのだったら、書き込める便利な手帳を作った方がいいなと思って、何回か改良をしてこれを作るようになったのです、いくら印刷代がかかったら知らないのですが、東大病院ではただで差し上げています。(筆者注:最近では東大病院の女性診療科のホームページからもダウンロードできるようになっていますが、複写型のノートは現在でも外来で差し上げています。)


月経手帳

不妊症に関する評価

よく「内膜症と言われました。不妊症の原因ではないでしょうか」と慌てて飛び込んでくる方がいらっしゃるのですが、子宮内膜症があるからといって不妊症とはいえません。また不妊症のカップルの女性に子宮内膜症があるからといって、それだけが不妊の原因とも限らないのです。勿論子宮内膜症が不妊症に関係する可能性はありますから、よく調べる必要はあるのですが、それだけで慌てて子宮内膜症の治療を始めるには問題があります。不妊症の原因はかならずしも一つだけとは限りません。女性の排卵因子、卵管因子、だけでなく、男性側の因子もあり得ます。一組のカップルに複数の問題がある場合もあります。ですから、女性に子宮内膜症が見つかったからといって、すぐには治療を始めず、一般的な不妊症のいわゆるスクリーニング、つまり考えられる可能性をすべて検査する、ということをします。
というのは、例えば奥さんの方に子宮内膜症があって、そのせいで卵管の働きが悪いので、手術して治療したのに、実は後からご主人の精液にも問題がることがわかって、最初から体外受精をしなくてはならないことがわかった、つまり卵管の働きは悪くても治療する必要はなかった、というようなこともあります。ですから、赤ちゃんが授からない、という場合にも慌てずに、例えば卵管の具合を見る検査とか、それから女性側のホルモンを見る検査とか、さらに大切なのは夫の側の検査なども全部すませた上で、子宮内膜症もしくは子宮腺筋症の存在が、そのカップルの不妊症の原因の中で、相対的に見てどの程度悪い影響を与えているのか、その位置づけをして、それによって不妊治療全体のなかでの子宮内膜症の治療方針を決める必要があると思っています。

症状の評価(不妊症)


(提供:甲賀かをり)



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社会的背景と疫学

子宮内膜症は近年増加傾向にあります。10年程前の調査結果で少々古いデータですが、全国の病院に調査を依頼して、ある一定の時点での通院している子宮内膜症の患者さんの人数を調べました。その結果、約13万人いることが判りました。他の統計等も参考にして、子宮内膜症かもしれないが受診していない人も含めて推計すると、子宮内膜症を有する女性は凡そ250万人から260万人いることが判りました。
 
生活習慣病や成人病は年齢とともに増えていきますが、ある年齢層では成人病の人たちと同じ位の頻度で医療機関を受診していました。子宮内膜症の患者さんがいかに多いかが解ります。この人数は生殖年齢の女性の7%から10%にあたります。
病院受診者の内訳を見ると、月経困難症を有する女性の25%は子宮内膜症、腺筋症が原因のようです。内膜症でも月経困難症がない人もいて、不妊症で病院を受診して内膜症病巣がみつかった人もいますが、子宮内膜症の患者さんの88%には月経困難症があり、そのうちの約20%の人は鎮痛剤のレベルでは効かない人です。多くの人は鎮痛剤で何とか痛みに対処できていますが、駄目な人が20%位います。
 
月経困難症の患者さんにとってQOLは非常に重大ですが、痛みには主観的な部分もあるので社会にアピールする為にはお金に換算したほうが理解しやすいだろうということで医療経済学者に計算してもらいました。
子宮内膜症に限らず月経困難症が原因で仕事が満足にできない人がいます。仕事を丸一日休んでしまう人、半日位寝ていれば何とかなる人、勤めていない専業主婦の労働も含めて賃金に換算すると半年で1890億円、一年で3800億円から3900億円になり4千億円近い労働損失になりました。
働けないで損をしてしまう金額が4千億円です。更に子宮内膜症や月経困難症を治療したり、市販薬の鎮痛剤を買うなどでかかる医療費が約6000億円です。合計するとこの疾患でおよそ1兆円のお金が必要になってきます。莫大なお金が失われていることになります。
(提供 百枝 幹雄)

 

大切な事は、社会的背景の評価です。患者さんが何で困っているのか、どのぐらい困っているのかは様々です。同じお腹の中、同じ凍結骨盤の人でも、痛がっていない人もいれば、ものすごく痛がる人もいる、ちょっとした子宮内膜症でも、ものすごく痛がる人もいます。ですから、医学的に子宮内膜症の病状がどれくらいかということと、その人がどのくらい困っているのかはまた別問題なのです。
患者さんによく伺う事が重要になります。痛みの程度だけでなく同じ痛みでも、月に1回くらい家で寝込んでいても困らないという人もいれば、毎日毎日少しでも痛くて気になると仕事が身に入らないという人もいますので、同じ痛みの具合でも、その人にとって日常生活にどれくらい支障をきたすのかを伺います。
妊娠に関する患者さんの希望、考え方、もそうです。子宮内膜症は卵巣ホルモンの刺激によって悪くなるので、排卵したり、生理があったりすることが病気の勢いを高めることになります。
そのため、生理を止めたり排卵を止めたりするような治療を選択しなくてはいけないことが多いのです。患者さんが例えば今すぐ妊娠したい希望があるのか、或はないのか。今はないけれど将来は妊娠したい希望があるのか、40代後半になって、赤ちゃんはもういらない、けれども卵巣機能は少しでも残したいのか、それともそのようなこだわりはないのか、といったことを伺うのは大変重要です。
子宮に関しても、これはかなり肉体というよりは精神的な要素が強いのですが、たとえば赤ちゃんを産む予定はなく、子宮は要らないといえば要らない臓器だ、と、肉体的には考えられても、精神的には子宮は取りたくないという方がいらっしゃいますので、その希望がどれくらい強いのか、をゆっくり伺います。
あるいはこういう病気にかかられる方には、お子さんの受験があったりとか、親の看病があったりで「私入院なんかしていられません」という方もいらっしゃれば、「1ヵ月くらい入院する方が毎月通院するより楽です」という方もいらっしゃいます。つまり、治療のための通院、入院はどのくらい可能で、時期はいつがいいかという社会的背景も重要です。

患者さんには色々な希望があります。そうするとなるべく何でも聞いてあげたいのですが、その中で優先順位をどう付けるかも重要です。「痛いのをとにかく何とかして欲しい、もう子供はいらない、入院には何とかして日程を取る」という方もいらっしゃいますし、「どんなに痛くても我慢するので、子宮は絶対とりたくない、入院なんてしたくない」という方もいらっしゃるので、その辺の優先順位をどうしたいのかをよく伺うのは私たちにとって必要なことです。一方、患者さんにとっては、それをアピールすることは大切ですので、患者さんも多分医師の前では言えなかったことがあると思いますが、ご自分の為になりませんのでどんどん遠慮なく、医学的なことには関係ないかなと思っても、社会的にこういうことで困っている、こういう希望があるのだ、といった事は積極的に医師にアピールした方がいいと思っています。


(提供 甲賀かをり)

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治療方法

診療の進め方

子宮内膜症の治療方にはいくつかありますが、患者さんの年齢、現在及び将来における妊娠希望の有無、症状の程度、過去の治療の有無とその方法等によって、何を優先的に考えるかで変わります。患者さんが何を優先的に望んでいるのか、たとえば痛みの緩和なのか,不妊の治療なのか等を考えることが重要なのです。そのためには患者さんと主治医がお互いに納得するまで話し合える「関係が大切なわけで、最後は本人の自己選択権で決めていただくこともあります。
また、将来を見越した長期計画のもと、治療のメリット、デメリットを考えることも重要です。経過を観察することもありますが、基本的な治療法は薬物療法と手術療法です。
(提供 堤 治)

子宮内膜症は命に直結する病気ではないので、内膜症があっても必ずしも治療が必要とは限りません。目的をハッキリさせて治療に入らなければいけません。従来の治療目的は疼痛の緩和と妊孕性の改善でしたが、最近問題視されているのが悪性化です。治療の目的に悪性化の予防が加わって3つになりました。  
治療方法には薬物療法と手術療法があります。痛みには薬物療法も手術療法もそれなりに効果があるので、この2つをうまく組み合わせて使っています。
不妊の場合は、薬を色々使ったからといって、すぐに妊娠率が上がるわけではありません。妊娠率が上がるという論文もありますが、エビデンス(科学的統計的)に基づいた論文では、おおむね子宮内膜症の薬は不妊治療に対して有効ではありません。不妊には手術療法が効果的です。

体外受精をする時に組み合わせて使うと妊娠率が向上する事もあるので薬物療法の効果は△です。悪性化の予防という点では、ピルも予防の可能性はあっても進行を押さえる効果は完全とはいえずエビデンスもありません。予防するなら手術療法しかありません。こういった目的で治療法の位置づけがなされています。
(提供 百枝 幹雄)

 

強調したいことは、初診で「あなたはこういう病気です。このくらいの状態です」と診断してGnRHアナログをやりましょうと決めたらそれで終わりとか、手術をしましょうといって手術をやったら終わりとか、1回決めたらそれでそのまま治療方針を変えないということは絶対にしないようにしています。
最初に、その方の病状だけでなく、実際にどういう症状で困っていらっしゃるかをよく伺います。そして年齢がおいくつで、もう少しで閉経なのか、それともこれから赤ちゃんを産む必要があるのかも考慮します。
そして患者さんの社会的な背景です。痛みで非常に困って仕事に差し障っているのか、家庭での生活が困っているのか、それとも不妊症で悩んでいるのかということを、よく話を伺って診察をします。
一旦、この人はこういう病状で、こういう症状に困ってらっしゃることが判って、治療を何かしら始めたとしても、それで半年放っておくわけではなく、2ヵ月、4ヵ月というところで、ちゃんと効き目があるのか、病状、症状はどう変化しているのかを、もう一度評価して、駄目ならば別の方法に切り替えるという事をしょっちゅう、しょっちゅうやりながら、診療を進めていくようにしています。ですから患者さんには、ちゃんと医師に自分の病状、症状、困っている問題をアピールして欲しいと思っています。

症状もとても込み入っていますし、一つの症状だけでない方もいらっしゃいます。治療もいっぱいオプションがあって、それぞれに副作用があったり、効果が弱かったりすることがあるので、一概にこの症状にはこの治療という説明はできないのですが、大体こういう感じでやっていますと参考までにご説明して、おのおのの治療法についてはあとでまとめて解説します。

痛み
痛みが主な症状の方の治療は子宮内膜症でも子宮腺筋症でも共通です。いきなり手術でとにかく取ってしまうということはあまりしません。どんな病気でもそうですが、効果が少ないかも知れないが、リスクも少なく副作用も少なそうな治療から始めて、駄目ならもう少し効果も期待できるが副作用も多い治療にステップアップします。それも駄目なら手術を選択することになります。
どんな病気でもそのようなステップを踏むと思うのですが、痛みに関しても同じで、なるべく対症療法でどうにかならないか、駄目ならホルモンを少しいじってみるか、それでも駄目なら手術して病巣の部分をとるなり根治方式で全部取る手術をするか、という順番でやることが多くなります。

不妊
不妊症に関してですが、これは、子宮内膜症に対するホルモン治療をして、つまり排卵を止めたり生理を止めたりすると、妊娠はできなくなってしまうので、ここが一番ネックです。やはり手術療法で、最初は癒着、卵管の回りががちがちになっているところを取ったり、腫れているところをくり抜いたり、お腹の中をきれいに洗ったりします。
それでも駄目なら、体外受精などの補助生殖医療に頼ることになりますが、これも難しくて、体外受精をしようと思って排卵誘発剤でたくさん卵子が育つように卵巣を刺激したりすると、その間に子宮腺筋症が悪くなったりすることがあるので、その辺のアクセルとブレーキの踏み方がとても難しくて、私たちも大変なのです。

主な症状別の治療法

子宮内膜症性卵巣嚢胞

チョコレート嚢胞がありますという方に対しては、大きさにもよるのですが、3、4センチ位だと、自然になくなってしまうこともありまし、ピルを飲んでいると縮んでしまうこともあるのですが、6センチ以上になると、4センチぐらいまでは薬で縮小させることは出来ても、消失させることは出来ないので、手術を先にお勧めすることが多くなります。
手術を前提に少しお薬を使うことはありますが原則的には使いません。ただし、どうしても何度も再発してしまって手術は大変だとか、様々な事情があるような場合は手術をしないでホルモン療法を使うこともあります。

主な症状別の治療法2

(提供 甲賀かをり)

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取り扱い規約

取り扱い規約

2004年10月に日本産婦人科学会で、産婦人科のオーソリティが、「子宮内膜症取扱い規約」という文書を出しました。これが結構面白いというか、内容をくわしくご紹介するつもりはないのですが、産婦人科のオーソリティは、これまでも「子宮頸癌の取扱い規約」とか、「子宮体癌の取扱い規約」とか、「卵巣癌の取扱い規約」などを発行していて、こういうふうに診断されたがんは、こういうふうに治療しましょうという、全国的にそれなりに統一して皆で決めた治療法でやっていきましょうと推奨するために「取扱い規約」という文書を出してきて、子宮内膜症に関してもこれを真似たのです。
ところが、ガンと子宮内膜症が決定的に違うことは、患者さんは死なないのです。ガンの場合は、本人が痛くも痒くもなくても「あなたは卵巣ガンの3期です」そうしたら「とにかく手術をしなさい」その後は「この化学療法を6コースやりなさい」と、インターナショナルにも、どの方法が一番効果があるのだ、という証拠が集まっています。そうしないと再発してしまうとか、5年生存率は下がってしまうとかということもわかっているので、自信をもってこちらもいいます。患者さんも家族も、そうなったら「家族だ、子供だ、仕事は」などとはいっていられない。とにかく治療に専念しようと一丸となって治療に突き進んでいくので、「お互いやり易い」というと語弊がありますが、勿論病気自体はシリアスな病気なのですが、治療方針を決める意味ではあまり迷うことがないのです。
ところが子宮内膜症の場合、症状は多彩ですし、同じような病状でも患者さんによっては困っている場合と、困っていない場合があるので、困っていないことを治療してもしょうがないわけです。そこが難しいところで、3期の人はイエスで、4期の人はノー、などとフローチャートにのっとっていくというような、通り一遍等ではいかないので、デジタル化ができないというか、現場の判断でアナログ情報を頭で有機的に解釈しながら、その人その人にふさわしい治療法を選んでいきます。同じようなお腹の状態でも、同じ治療をすればいいというものではないのです。
ガンだったら、この人はこの治療、こちらの人はこの治療と、お腹の中を見ると決まるわけですが、卵巣子宮内膜症とか子宮腺筋症の場合は同じようなお腹の状況の方をならべてみても症状も多様ですし、おかれている社会的背景も違いますから、求められる治療法も様々なのです。ですから、一応こういう規約があるというだけで、これをたよりに治療法を決めている医者は、少なくとも子宮内膜症の専門医ではいないと思います。
(筆者注:この取扱い規約は2009年現在、改訂版の作成中)

実際の取り扱いとは

患者主体の治療法の選択

同じ子宮内膜症とか子宮腺筋症という病気でも、不妊で困っている方、痛みで困っている方、卵巣嚢胞があることを指摘されている方、生理の量が多かったり、お腹が圧迫されたりして困っていらっしゃる方、それが2つ3つ重なっている方もいらっしゃいます。
社会的なバックグラウンドもその方その方で違います。治療した時の副作用の出具合も人によって違います。同じ副作用でも、痛いのよりは我慢できるという方もいらっしゃれば、こんなだったら痛いほうがましだという方もいらして、その辺が治療方針を簡単には決められない事情です。途中で何度も評価をしながら、決めていかなくてはいけないので、何度も繰り返しますが、スプレキュアを4回やった時点でたとえそれが治療の途中でも、いやならいやと絶対に言った方がいいです。私たち医師も、それでまた考え直して違う治療法を選ぶということを、意識しなければいけないことですし、患者さんにも言う権利があり、義務があるということを、常に心がけていただきたいと思っています。

色々な病院を回って来て「A病院では手術を勧められたが、B病院では、うちでは手術はできないといわれて、どれが正しいのか頭が混乱してしまって、先生どうしましょう」と、かけこんでいらっしゃる方が子宮腺筋症でも子宮内膜症でも沢山いらっしゃいます。
私は考え方だと思うのです。ガンの人は、「あなたはこの期だからこの治療をしなさい」といわれて、ある意味追い詰められるわけです。「これしかないです」と。ところが、子宮内膜症の場合は選択肢が沢山あるわけです。すべてにいいような選択肢はありませんが、「私はこれだけは我慢できないが、これは我慢できる」、「これはなんとなく気が進まないけれど、これだったら気が進む」とか、何でもおっしゃっていただければ、幾つかある選択肢の中から、患者さんが選ぶことができるのです。私たち医師は常に色々な情報を提示して、これがいいと選んだ治療法がうまくいくように、細かいところをアレンジし、治療法を選択するお手伝いをしていると考えていただければ、「どの治療法が一番良いのか判らなくなって、困っちゃう」というより、「治療法がいっぱいあって、選択肢があって恵まれている」と考えられると思うのです。

よくある質問と答え
(提供 甲賀かをり)

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